明治安田生命 J3 LEAGUEのカマタマーレ讃岐の監督に就任したゼムノビッチ氏。
ゼムノビッチと言えば、あのオシム監督とも親交が深く、これまで日本サッカーに多大な貢献をしてきた人でもある。
カマタマーレ讃岐の監督に就任する前、ゼムノビッチ氏が相生学院高校サッカー部の監督をしていた時に、実施したオンラインインタビューの模様をご紹介します。
日本の育成年代の話、日本サッカー成長のヒントについて伺いました。
ーー相生学院高校サッカー部の監督に興味をもったきっかけはなんでしょうか
まず環境が素晴らしいことに驚きました。天然芝、人工芝、土のグラウンドがあり、更には体育館でも、砂浜でもトレーニングができる。世界でもこんなに充実した環境はありません。ユース年代を育成する上で理想的な環境です。
日本の高校年代を見て感じるのは、部員が多すぎて試合に出れない子も多かったり、練習する場所も他の部と譲り合わなきゃいけなかったり、練習場所も十分に確保できないことが多いです。
この素晴らしい環境で良い選手を育てて、世に送り出すというプロジェクトはとても面白いと思いました。
特徴のある選手を育てる
ーーどんなコンセプトで指導されるんでしょうか?
一人ひとりのポテンシャルを最大化すること、特徴のある選手、武器のある選手を育てること。そこがベースになります。まず個の力を育てないといけない。日本は平均的なレベルが高い選手を育てるのは上手いですが、特徴ある選手を育てるのが上手くないと思います。
小さい頃から、クラブチームでもスクールでもサッカーを教えすぎてしまって、あれもこれもまあまあできる平均値の高い子はたくさんいます。でも、特徴ある子、雰囲気ある子が本当に少なくないと思います。
最初は武器になり得ない小さな特徴でも、それがどうやって武器になるか、どう育てていくかを見極めて伸ばすのが指導者の役目です。
アイデアを育てること
ーー日本はなぜ特徴ある選手が出てこないんでしょうか
日本の育成年代を見ていると、コーチとか監督がとにかくよく怒っています。子どもたちは怒られないように言われたことを守ろうとします。勝つためにプレーするんじゃなくて、コーチに怒られないためにプレーしてしまう。
選手は試合中に、小さなチャレンジをたくさんしますが、ミスをする度に怒ってしまうからチャレンジすることすら辞めてしまう。たくさんの才能がそんな指導で芽を潰されてる可能性があると思います。
どういうミスだったのか、プロセスをちゃんと見ないといけない。アイデアはとてもよいのに技術的に足りなくてミスをしてしまっているのなら、技術をつければいいんです。そういうところが見れないといけません。
指導者は選手のアイデアを育てるものなんです。
サッカーは自分のやりたいことを相手に隠しながらプレーするものです。
駆け引き、騙し合い、それにはアイデアが必要なんです。
日本の教育は、世界的に見ても素晴らしいです。安心して生活できる治安。みんなルールを守る。勤勉にとてもよく働く。世界中見てきましたが、こんな国は他にないです。でも、正しさを重視しすぎてしまうから、ずる賢さ、アイデアが育ちにくいと思います。
選手からスタートしないといけない
サッカーを生み出したのは監督じゃないんですよ。最初は選手とボールから始まったんです。それが発展して、客観的にチームを見る監督が役割として出てきたにすぎないんです。監督からスタートしちゃダメ、サッカーは選手からスタートしないといけません。選手たちがそれぞれのポテンシャルを発揮できるようにサポートすることが僕たちの仕事です。それは絶対忘れちゃいけません。
日本の子たちはとても従順です。言われたことをちゃんとやろうとします。教えればできる。でも、教えられないと動けないじゃサッカーはダメなんです。そんな日本の教育文化が、監督が強くなりやすいんだと思います。
まずは自ら動いていくという気持ちを育んでいきたい。
日本人の可能性とは
ーー日本人はサッカー向いてるんでしょうか。
とてもポテンシャルがあると思います。とりわけスピード、アジリティは世界でもトップクラスです。そういう日本人の特徴をサッカーに活かせるようにトレーニングする必要があると思います。ここはまだまだ伸ばせるし、駆け引き、ずる賢さがあれば日本はまだまだ強くなります。
日本人の可能性を相生学院サッカー部の子たちが表現してくれることを願っています。
後任は元アーセナルのジェリーペイトン氏
相生学院高校サッカー部からカマタマーレ讃岐の監督に就任したゼムノビッチ氏に代わり、イングランドプレミアリーグのビッククラブ、アーセナルのトップチームで15年間GKコーチを務めたジェリーペイトンが監督に就任。
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ゼムノビッチ氏からジェリーペイトン氏という、世界レベルのコーチがバトンを渡す形になった相生学院高校サッカー部のこれからが益々楽しみです。