(書き手:佐藤 靖晟)
ルイス・ムリエルをご存知だろうか?
イタリアセリエAのAFCフィオレンティーナに所属するコロンビア代表のFWだ。2011-12シーズン、ルイス・ムリエルはレッチェというクラブでプレーしていた。それまで、ウディネーゼに所属していた彼は現在同リーグのユベントスに所属するクアドラードとともにレンタル移籍をし、セルセ・コズミ監督の薫陶を受けてリーグで頭角を現していた。
コズミ監督はムリエルについてこう述べた。
「ムリエルは怪物だ。しかし、自分が今まで指導してきた選手の中で一番強力だという意味ではない。一番潜在能力のある選手ということだ。クアドラードは素晴らしかった。だが、本当の怪物は彼だと思う」
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フィオレンティーナ、チェルシー、ユベントスなど名だたるビッククラブにステップアップをする同国出身のクアドラードよりも、その潜在能力は高く評価されていた。ウディネーゼ時代にはその時のチームメイトであり元イタリア代表でレジェンドのディ・ナターレに「ムリエルはすごい。アレクシス・サンチェスよりもやばかった。彼は怪物になるなと確信したよ。」と言わせている。
フェノメノの再来
ムリエルはコロンビアの貧しい家庭に生まれ、練習に行くバスに乗るお金もない時もあったという。しかし今ではセリエAで最も稼ぐ選手の一人となった。
ムリエルは自分を取り巻く環境は自分で変えられることを教えてくれる。彼はイタリアで「Fenomeno(フェノメノ)」と呼ばれている。
Fenomenoとは元ブラジル代表の点取り屋、2002年W杯で優勝したブラジル代表のロナウドの相性だ。走り方、ボールの持ち方、フェイントのかけ方が怪物ロナウドを彷彿させる。
目の肥えたCalcioのファンがそんなロナウドとムリエルを重ね合わせるくらいに彼のプレーはスピード、テクニック、有り余る迫力で他を圧倒している。
そんな素晴らしい潜在能力の持ち主でノッた時には手のつけられなくなる「Fenomeno」のプレーを動画を使って紐解いていこう。
野生的な推進力
後ろからボールを狩にくる相手を感じ、ひらりとかわす。
頭の後ろに目がついているようにも見えるこのプレー。
見ているんじゃなくて感じているんだ。
ぴったり付かれていても相手に触らせずに一瞬で前を向き、他のディフェンダーが奪いにきたところで裏街道。
そしてゴールまで誰にも追いつかれないスピード、推進力!
まさにフェノメノを彷彿とさせる。
トップスピードでゴールまで向かう。相手が2人でボールを奪いに来たところで相手のタイミングを外すためにギアを上げる。
想像の一枚上をいくギアを持ち合わせている。
ムリエルのすごさとは…
コロンビアの怪物の凄さは、意のままにスピードを操れること、そして相手の重心を一
瞬で読み、無力化することだ。
強靭なフィジカルを持ち合わせながらパワーだけに頼らない。
腕で相手を抑えながらゴリゴリ進むのは南米の選手にありがちだが、ムリエルは華麗にボール運ぶ。
相手の重心を一瞬で外す感覚はまさに野生だ。
相手がボールを奪いにくる瞬間を感じ、その逆を取る。
そしてスピードを自由自在に操れるとなると、相手はなす術がない。
シンプルにプレーすることは複雑にプレーするより難しいものだ。
派手なフェイントは一切ないが、上手く相手の逆を取りチャンスメイクできる。
相手を感じることができればれば大きなアドバンテージを得ることができる。
ピッチで自由になるには相手を感じなければならない。
目の覚めるようなフリーキック。
凄まじい右足の威力。
相手はムリエルの右足を警戒してコースを切っているが、左足でもこの威力だ。
ムリエルは両足で決定機を演出できる。
左右の足を高いレベルで使いこなせると、相手に混乱と驚異を与えることができる。
一瞬のスピードで相手の裏を取りゴールに沈める。
ムリエルは点の取り方のバリエーションも豊富で抑えどころのないストライカーだ。
ディフェンダーはムリエルを捕らえることは困難だ。
圧倒的なスピードと相手の重心を見る力で剥がされ、ゴールまでボールを運ばれてしまう。
怪物ロナウドを彷彿とさせるムリエルにぜひ注目していただきたい。
ライタープロフィール
佐藤 靖晟 21歳
高校卒業後イタリアに渡り1シーズン半、今年からスペインに移籍してプレー。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…