名古屋グランパスを率いる風間八宏監督の著書「超「個」の教科書 -風間サッカーノート-」にはサッカーの本質がつまっています。私の大学時代の恩師でもある風間さん。サッカーの本質とは何かを考えるきっかけを与えてくれました。そして今も尚、日本サッカーに大いなるヒントを発信し続けている。
この本の一部を抜粋してご紹介させていただきます。
「組織をつくることで個を生かす」のではなく、「個を生かすことで組織にする」
私のチームでは「個」が先に来ます。チームのことを考えるのではなく、まず自分のことを考える。そして自分の持っているものを100%出してもらう。そんな「個」がつながれば、自然と「組織」になっていくという考え方です。
私が、選手たちに求めたのは「個人の利益とチームの利益を一致させる」ということです。つまり、個人がどんどん結果を出せば、チームも結果を出せるという考え方です。
組織がうまく回るためには、自分がやりたくない仕事をやらなければいけないこともあります。一般社会でも、そういうケースは多いのではないでしょうか。でも、私は自分のチームの選手たちには、できるだけそういう風に仕事をしてもらいたいとは思っていません。
自分がやりたいようにやって、フルパワーを出してほしい。それがチームにとってプラスになれば、全員が〝楽しむ〟という状態をつくることができる。 フロンターレではベテラン、中堅、若手まで、どんどん伸びていきました。
チームのために個が犠牲になるという考え方はナンセンスだ。
風間監督の言うように個人個人が自分の力を100パーセント出すことができて、はじめてチームの力になる。これは会社という組織も同じです。私自身が身を持って経験しました。チームのためにだけ働くことは個人の力を殺してしまう。
個人の魅力を発揮すること、それが繋がっていくことでチームとしての力になるのだと思います。
チームのトップレベルの選手を基準にする
「今のトラップはちょっとずれていたぞ」 「パスを出すまでのタイミングが遅い」 私が憲剛に厳しいことを言うと、他の選手たちは驚いた顔をしています。「え? 憲剛さんでも、ダメ出しされてしまうのか」と。当時のフロンターレにはボールを止める・蹴るという技術に関して、憲剛以上にうまい選手はいませんでした。
日本の中でも、憲剛の技術レベルはトップレベルです。むしろ「憲剛をお手本にしろ」と言うこともできると思います。でも、私はそうはしなかった。
ボールを止めてから蹴るまでを1秒で行っていたとしたら、0・9秒にしろ、それができたら0・8秒にしろ、というように、より高いレベルを求め続けたのです。
下に合わせると「基準」が下がる
なぜ、私がチームの中でトップの選手に厳しい要求をしたのか。それは上の選手を伸ばすことで、下の選手が自然と上がってくるからです。例えば、私が憲剛ではなく、試合に出ていない若手の選手にばかり注文をつけていたら、チーム内で求められる基準が下がってしまいます。
下の選手に合わせて基準を下げてしまうと、上の選手たちは貪欲に成長しようとはなりません。
サッカーを指導しているとどうしてもレベルが落ちる選手の指導に目が行きがちです。コーチングが偏るのはおそらく大くの現場でそうでしょう。
しかし、あえてチームの主力選手のレベルを基準にし、そこを引き上げていくことで全体のレベルが上がっていくというマネジメントで結果を出し続けている風間監督の言葉は真実なのです。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…