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小林悠のゴールに見る、攻撃の型を身に着けるメリットとは

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Jリーグ第32節、浦和VS川崎F。

 

0-1で川崎がリードする展開の中、後半33分。

川崎は途中出場した小林悠が貴重な追加点を決め、0-2とする。
このスコアのまま試合は進み、川崎が勝利した。

 

勝敗を決定付けた小林のゴールには、日本では悪とされやすい

 

「攻撃の型」

 

がいかにメリットがあるかを見ることができる。

今回は、このゴールを分析することでそのメリットを解説していこう。

 

ゴールシーン

 

まずは映像からご覧いただきたい。
簡単に説明すれば、アーリークロスをニアで合わせたゴールである。

 

 

 

 

ここで着目したいのは、

 

①なぜ小林は先にボールに触れたのか

②なぜ守田はピンポイントでクロスを蹴れたのか

 

という点だ。

 

そしてこれらを解決するのが「型」である。

 

 

「創造性」という言葉の難しさ

 

よくサッカー関係者が口にする言葉に

「創造性」

というものがある。

 

しかしこの言葉、指導者にとっては便利、選手にとっては厄介なものであることは意外と知られていない。

 

意味合いとしては読んで字の如く、創造する力を指すことが多い。
思いつかないようなプレーをする、と言えばいいだろうか。

代表的な選手にロナウジーニョが挙げられることが多い。

 

だが、よく考えていただきたい。

 

サッカー史上、過去に行われなかったプレーを発明する力は必要なのか?
そしてそれは簡単に身につくものなのか?

 

確かにチームがうまくいかないとき、指導者が選手に対して

「創造性が足りない!」

と言えば、自発的に考えることを促しているように見えるだろう。

 

しかし実際は、公式も教えずに数学の問題にトライさせているようなものだ。ノーヒントで解決する力は、一握りの才能の持ち主にしか宿らない。

そんな神頼みの能力を、必須としていいのか。

 

 

私は必要ないと思っている。


それよりも、多くの「型」を身に着け、適切なものを選ぶ判断力が戦うために必要になると、選手生活で痛感した。

 

選択肢を複数持ち、適切なプレーを選択することの大切さは、
前回の仲川の記事にて解説したとおりだ。

 

keikun028.hatenadiary.jp

 

 

そして、このゴールから型の優位性を認識することで、指導者・選手共に上達の手助けになればと思う。

 

 

「型」は判断が速くなる

 

では先ほどあげた二つの着目点を見ていこう。

どちらも型の優位性を生かした結果だ。

 

 ①なぜ小林は先にボールに触れたのか

 

守田がクロスを蹴るまで、小林は一貫してファー狙いの動きをしている。
一般的な選手であれば、ここでニアかファーか駆け引きをするのだが小林はあえてしなかった。

 

なぜか。

 

自分の特徴である一瞬の動き出しの速さを自覚しており、それを最大限に生かすためである。

 

駆け引きをするということは、どちらにでも動ける体勢や素振りを見せなくてはならない。細かく左右に動いたり、走るフリをしてみたり。


絶対にニアで合わせる、と決めている選手。
どっちに行くかその場で考え、体勢をコロコロ変える選手。


どちらが速いかは明確だろう。

 

 

②なぜ守田はピンポイントでクロスを蹴れたのか

 

そうなると問題になるのが、なぜ全く素振りを見せなかったニアへの動き出しに対し、守田は完璧なクロスを蹴ることが出来たのか、である。

 

映像を見ると、小林がニアへ走り出すのは守田が目線をボールに向けた瞬間だ。
つまり守田は、ニアへの動き出しを見ることなく判断している

 

考えられる可能性は一つ。
そこに小林が動くことを「知っていた」のだ。

 

これが、型の一番の強みである。

動き出しを見ずとも、積み重ねた練習により得た共通のイメージに導かれた結果、ボールは小林の頭に寸分の狂いなく届けられた。

 

判断に迷うことなく、キックに集中することで

 

・キックの精度
・判断のスピード

 

この両者が浦和の守備陣を上回るクオリティに達したのである。

少しでもキックがずれればゴールには繋がらないし、僅かに判断が遅れただけでもDFに対応されてしまうだろう。

 

考えること、考えないこと

 

サッカーは頭脳をフル回転させるスポーツだ。
だからこそ、ゴール前のようなコンマ一秒を争う状況では

 

「考えないことの速さ」

 

が大いなるメリットとして働くことがある。

 

前回の仲川の判断が個人としての型ならば、
今回の小林のゴールは複数人が共有した型であるといえる。

 

ここ数年、サッカーはより高速化した。
その中で、チーム全体が型を共有し高速化に対応するケースも多い。

 

ビルドアップで、守備で、クロスで。

 

そんなプレーの一端から型を見つけ、それを習得する過程を想像する。
それはファンにとって新たな楽しみになり、選手や指導者にとっては有益な教材となるのではないだろうか。

 

ライター

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