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神戸・古橋亨梧のゴールに学ぶ、セオリーの大切さとは

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Jリーグ第32節。

 

神戸VSC大阪の試合。

私は現地で観戦していた。

 

そこで見た、古橋亨梧の決勝ゴールが素晴らしかった。

改めて映像で見て、凄さを皆様に伝えたいと思ったので、ここで解説させていただく。

 

彼のゴールはどのようにして生まれたのか。

順を追ってみていこう。

 

状況、実際の映像

 

まずはこちらの映像をご覧いただきたい。

 

  

山口からパスを受け、シュートまで持っていった古橋。

 

受け方、トラップ、シュート全てが質の高い判断だったと筆者は思う。

また、それを可能にしたスキルも素晴らしい。

 

それぞれ、場面ごとに細かく見ていこう。

 

パスを引き出す動き

 

山口がボールを受け前を向いた瞬間、前線には古橋と田中の二人がいた。

 

近いポジションにいる田中は裏を取る動きをしている。

それによりC大阪のDFラインがわずかに下がる中、遠いサイドにいた古橋は足元にボールを要求した。

 

パサーに近い選手が裏を取り、遠い選手が空いたスペースを使う、というパターンは良く見られるがそれに似た動きとなっている。

 

ここで前線の二枚が同時に違う動きをしたことで、それぞれへの対応を迫られたC大阪は、結果的に古橋へのパスを許すこととなった。

 

田中、古橋共に状況をよく見た動きだと言えるだろう。

 

 

トラップはどちらの足で?

 

他にもサッカーの鉄則として、

 

「ボールは遠い方の足でトラップする」

 

ということがよく言われる。

近い足でトラップするよりも、よりゴールへ体を向けたトラップをするためだ。

 

しかしDFが近い状態でこのトラップを行う場合、大きなリスクが伴う。

僅かなミスでボールを奪われたり、近すぎて接触してしまうためである。

 

古橋は田中との連携でわずかにDFを離したとはいえ、スペースはかなり狭いのがカメラ視点でも良くわかるだろう。

 

この距離にもかかわらず、セオリー通りに遠い足でのトラップを選択した古橋。

DFの動きを予測、あるいは間接視野で捉えることで前を向きながら右足側へ転がすトラップをし、内側をケアしようと走ってきたDFの背中を取ることに成功した。

 

 

単純に、このトラップはとても難易度が高い。

角度でいえば180度以上回転しながらコントロールしなければ成功しないのだが、

 

①足元に止めながら体を回転させ

②素早い2タッチ目でDFの背中へ運び出す

 

という段階を踏むことでシュートコースを作り出した。

 

そしてこれだけ近い位置にDFがいながら、それでも前を向く判断をする頭脳と自信を何よりも筆者は賞賛したい。

 

「前を向け!」

という言葉はよく聞かれる言葉である。

前を向くために必要なスペースの広さは選手によって大きく変わってくる。当然ながら、狭ければ狭いほど難易度が上がり、前を向ける選手は限られてしまう。

 

ボールを奪われることは怖く、前を向こうとしなければそのリスクは消すことができる。

躊躇せずリスクを背負ってチャレンジするには、それが正しい選択肢だと冷静に判断する頭脳、そして恐れず成功を目指せるメンタルの強さ、なによりも成功させる技術が必要だ。

その為、前を向ける選手はそれだけで大きな価値、武器だと言える。

 

 

これだけ狭いエリアでも前を向きゴールを狙うことができる古橋は、それらを兼ね備えている。そのチャレンジのご褒美として、シュートチャンスを作り出せたのだ。

 

シュートはファーに打て

 

そしてシュートの際の鉄則、それは

 

「シュートはファーへ打つ」

 

ということ。

 

この鉄則一つを解説するのにも、実は数千字ほどかかってしまうのだが、要点を挙げていくと

 

・GKは基本的にニアへの対処が最優先となる
・ボールからゴールを守る以上、立ち位置がニアへ寄る

ということがよく言われている。

ファーを優先して対処するのはフリーキックの時ぐらいである。

 

 

今回のシーンでいえば、古橋が左へ運び出すのに合わせ、GKもポジションを修正しなくてはならず、よりニアサイドへわずかに動いている。

このタイミングでファーを狙うということは、重心の逆を突くことになり、非常に対処が難しい。

 

が、当然ながら良いこと尽くめではなく、ファーへのシュートは欠点もある。

というより、そもそもファーへのシュートは高度な技術、そして身体能力が必要とされる。いいシュートを打つことが難しい、それが欠点だ。

自らが進んでいる方向と大きく違う方向へ、体を捻りながら蹴ることは至難の業だ。

 

また、遠いサイドを狙うためGKにもコンマ数秒ながら時間が与えられてしまう。弱いシュートであれば、たとえ逆を突いていても助走を付けたセービングで弾かれてしまっただろう。

 

シュートスピード、精度、どちらも低くなりがちなファーへのシュート、のはずなのだが古橋は完璧なシュートをネットに沈めた。

 

 たとえ技術的に難しい局面でも、際どいコースへ速いシュートを選択した判断力。それを具現化するシュート技術、身体操作能力は目を見張るものがある。それを証明したシュートだった。

 

余談ではあるが、古橋の利き足は右足である。

 

逆足にもかかわらずこのクオリティのシュートを放つこと。

それはDFへ

「どちらへ追い込んでも打たれる、決められる」

という恐怖を与えることとなる。この怖さこそ、FWが身に着けるべき能力なのかもしれない。

どう守備をすれば点を取られないか、そのイメージが湧かない選手こそ最高のアタッカーであり、古橋は着々とその道を進んでいる。

 

 

セオリーを具現化する難しさ

 

今回挙げたプレー一つ一つ、それ自体は多くの指導者、選手なら耳にしたことがあるような定跡である。

 

だが、クオリティを高めることで、このようなスーパーゴールを生み出すことができる。

どれだけ難しい局面で、より正しいプレーを高い精度で実行するか。

それが大きく試合を左右するからこそ、基礎が重要なのである。

 

古橋は基礎に忠実だからこそ破壊力を持つ、育成年代のお手本だ。

 

ライター

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