大人になってから学ぶサッカーの本質とは

日本にいながら外国人リーグでプレーする私の目から見るサッカーの本質とは… 元サッカー選手、元サッカーコーチ、中南米放浪サッカー経験者として好き勝手語らせて頂きやす

金崎夢生のポストプレーは駆け引きのお手本だ 〜PKを獲得したサガン鳥栖ストライカーの技術〜

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写真=Getty Images

 

J1リーグ第25節、鳥栖VS仙台。

 


0-1の状況から金崎の2ゴールで劇的な逆転勝利を掴んだ鳥栖。


金崎が獲得したPKを自ら決めた1点目。
このゴールが逆転の狼煙となった。

そのシーンには、一瞬で行われた駆け引きがいくつも潜んでいた。

なぜ金崎はPKを獲得することが出来たのか、分析していこう。

 

書き手:山田有宇太 

 

状況、実際の映像


こちらの動画の1:51から、そのシーンを見ることができる。

 

 

 

深い位置からのスローインを受けた金崎。
縦へ突破したところをDFがファールで止めPKの判定となった。

この間、金崎は1回ボールに触ったのみ。

 

なのだが、一連のプレーを見ていくと、仕掛けた駆け引きが見えてくる。

 

 

ボールが出た時の位置、触るときの位置 

 

スローインから金崎にボールが入るのだが、注目していただきたいのはボールを投げた瞬間の金崎の立ち位置である。


この時の金崎は、DFを背負いながらペナルティエリアの外にいる。

しかしボールが投げ込まれ金崎の足元へ辿り着くまでのおよそ3秒間。

 

この間に金崎はジリジリとDFを押し込み、結果的にペナルティエリア内でボールを触ることに成功した。

 

ペナルティエリアの内と外で何が変わるのか。

 

一番大きいのは、DFの対応の難易度が格段に跳ね上がってしまうことだ。

 

当然ながら、ファールを犯してしまえばPKになってしまう。
フリーキックよりも遥かにゴールの可能性が高いPKは、DFにとっては失点にほぼ等しい重みをもつ。だからこそ慎重に対応しなくてはならない。


このエリアに侵入された結果、後ろ向きの金崎に対し強く当たりに行くことが難しいシビアな状況へと一気に変化したのだ。

かといって弱気な対応をすればシュートを叩きこまれることは明白。

 


強気か慎重か、そんなジレンマにDFが挟まれるのがペナルティエリアである。

 

 

その事実を知っているからこそ金崎は、その内側を獲得するべくDFとの位置取りの駆け引きを制した。

 

このたった3秒、たった数メートルの駆け引きが、局面を大きく左右することとなる。

 

絶対的な自信、それを逆手に取るトラップ

 

個人的な見解ではあるが、金崎はフィジカルが強い選手だ。


決してムキムキではないものの、特にDFを背負いながらのプレーに強みを発揮する。
パワフルに相手を押し込みながらゴールへ向かっていく、そのプレーは特徴の一つだと思っている。
当然DFは、得意なパターンを警戒しなくてはならない。

 

このシーンでもやはり、内側へ体を捻じ込む素振りを見せる金崎。
このままDFを引きずりながら右足でシュートを打つ、そんなイメージが浮かんでくる。

DFはペナルティエリア内になってしまった以上、慎重な対応が求められる。
ましてやコンタクトに強い金崎が相手では、より神経質に対応しなくてはならない。


選択したのは、内側への警戒を強めた構えだった。
この選択は金崎が右利きである事も踏まえたベターな選択だった。


しかしそれを見越していた金崎は、強引に体を反転させ縦への突破を成功させる。

結果、DFはファールで止めてしまい、PKを獲得したのであった。

 


より内側を警戒して対応したDFを置き去りにしたこの突破。

内側へ押し込むパワー、そこに絶対的な自信があるからこそ逆を突くことが出来た、長所を相手に突き付けたうえでの「後出しジャンケン」。
一見強引でありながら、クレバーな頭脳と確かな身体能力、そして技術に裏打ちされた突破である。

1回ボールを触っただけでDFを手玉に取り、自らPKを決めた金崎。
その姿はまさにストライカーと呼ぶに相応しい。

 

 

ゴール前という戦場

 

このように、僅かな時間と距離に駆け引きが詰まっているのが、ゴール前という戦場なのだ。

 

コンマ1秒を争う頭脳の回転と技術、身体能力、そしてなにより意地がぶつかり合う極限地帯。
世界で最もスリリングな場所、そこで行われる奥深い駆け引き。


今後、皆様が試合のハイライトを見る機会があったらぜひ目を凝らしていただきたい。

 

あんなちっぽけな、ペナルティエリアを区切る白線。
その内側は、サッカーの本質が詰まった戦場なのだから。

 

ライター

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