バレンシア、バルセロナ、アトレチコとスペイン国内の強豪を渡り歩いたゴールゲッターが昨年、Jリーグへとやってきた。
名はダビド・ビジャ。
スペインリーグ(以下、リーガ)ではゴールランキングの常連、EURO2008では得点王を手にした超一流だ。
リーガ通算186ゴールを決めたワールドクラス。そんなビジャが決めたゴールが今年6月のJリーグベストゴールに選出された。
超一流が見せたスゴ技を、余すことなく解説してみたい。
ゴールが生まれたのは第17節、神戸VS名古屋。前半27分の先制点だった。
ここで、そのシーンをご覧いただきたい。
6月度の月間ベストゴールを受賞した#ダビドビジャ 選手のゴールはこちら✨@Guaje7Villa @visselkobe #Jリーグ
— Jリーグ (@J_League) July 11, 2019
総評、選手のコメントはこちら👇https://t.co/qCvX9q5EVz pic.twitter.com/XW2n500fNu
大まかにこのゴールは
①パスを引き出す動き
②ボールを持ってからの仕掛け
③シュート
の3フェイズに分けられる。順を追って見ていこう。
①パスを引き出す動き
パスが出る前、ビジャは一度裏を取りに行っている。
しかしパスが出てこないと察した瞬間にストップし、次のパスのタイミングを伺いなおしている。
これがいわゆる「動き直し」だが、その切替の早さは目を見張るものがある。
と同時に、動き直す動作の中で、ボールにつられたCBの目線を計算し背中に入っている。
このポジションを取ることで、ビジャにとってのDFは中央にいる一人のみ。パスが出る前に1対1を作り出したのだ。
更に走り込む動作を見せることで、パサーに裏を取る意思を見せつつも決して全力で走ってはいない。
スピードを出さないメリットはパスが出た瞬間にスピードを上げることでオフサイドを確実に回避できる点にある。
無論、相手にボールを奪われない為には全速力でスタートを切らなくてはいけない場面も存在する。
このシーンの場合、すでに1対1であり、そのDFとも距離が遠いため安全なスタートを切ってもカットされることはないと計算し、確実なタイミングを見計らっている。
②ボールを持ってからの仕掛け
ドリブルを開始した瞬間、DFは外へ追い込もうと骨盤ごと体を外に向け対応している。
ビジャが選んだ選択肢は、骨盤の更に外側へわずかにボールを動かすこと。
対応できない角度へのドリブルに対し、後ろへ下がることで対応しようと足を動かした。
その瞬間にビジャは改めて縦へ加速し直している。
「骨盤を揺さぶることがコツ」と話したのは、天才ドリブラーの宇佐美貴史だった。
ビジャはそれを、ペナルティエリア内という最もナーバスになり得る場所でやってみせたのだ。
縦へ加速するタイミングを重視し、利き足ではない左足で加速したのも見逃せないポイントである。一瞬を見逃さなかった絶妙なドリブルだったといえるだろう。
③シュート
シュートを打つ直前に、ビジャは右足アウトサイドでボールの位置を変えている。
もしこれをしなかった場合、シュートは左足で打つことになりやすい。それを避けるた
め、無理な体勢を取ってでも右へ位置を変えたのだ。
左足で打つことの問題点、それはGKとの駆け引きである。
もし左足でシュートを打つ場合、シュートコースはニアへ限定されやすい。カーブをかけることが難しいからだ。
これを避け、右足側に置いたことでビジャにはニアに転がすかファーにカーブをかけて打つかの選択肢が生まれる。
しかしGKとて黙ってみてるわけにはいかない。
ましてや名古屋のGKはリーグトップクラスのランゲラックだ。
ランゲラックはビジャが体勢を崩した瞬間に、シュートコースを消すべく飛び出した。
これは模範的正解であり、その判断スピードはさすがランゲラックというべきハイレベルなプレーだ。
しかしビジャはそれを目視した瞬間、体勢が戻る前に無理やりシュートを放つ。
飛び出したランゲラックの手が届かないように浮かし、キーパーを避けるようにインフロントで少しカーブをかけ、ゴールへと流し込んだ。
改めてシュートシーンを見直すと、ボールを浮かすべく足を潜り込ませる様子が確認できる。
以上の3フェイズの流れを把握したうえで、改めてゴールシーンをご覧いただきたい。
一つ一つの動作は決して派手ではないが、それらはすべてゴールを決めるために計算されたプレーであり、機能美だ。
そんな世界レベルを我々に見せてくれるビジャ。今後のプレー、一挙手一投足を目を皿にして見ていただきたい。
Jリーグが彼から学ぶことは、あまりにも多すぎるのだから。
ライター