ある少年サッカーチームの指導者の話です。
子ども好きで、教えることが好きなそのコーチは、指導にも熱が入ります。
決して怒鳴り散らしたりはせず、丁寧に、時間をかけて、身振り手振りで教えます。
でも、ポジショニング、蹴り方、戦術…コーチがプレーを止めて指導すればするほど、みるみる子どもたちの表情が無くなっていきます。
コーチはそれに気がつきません。
練習最後のゲームの時間。
コーチによって頻繁にプレーにストップがかかります。
いつものように、プレーを止めてコーチが話しはじめたとき、選手の1人が、コーチに聞こえないように小さな声で呟きました。
「ゲームくらい好きなように蹴りたいよ・・・」
よかれと思ってのコーチング。
うまくなってほしいと思ってのコーチング。
それが、子どもたちからサッカーの楽しさを遠ざけていることがあります。 コーチに言われ「しなくてはいけない」と思った瞬間、子どもたちの「したい」は消えてしまいます。
以前ご紹介した二冊の本にはこんなふうに書かれていました。
「したい」と「しなくては」。その間にある、とんでもない差。「自発的でなければ楽しくない」ということは、「義務化されたとたんに楽しさは消える」ということでもある」
参考記事:「遊びながら学び、学びながら遊ぶ」為末大さんに学ぶ成長の本質
こころから何かに夢中になって「こうしたい」と思うことをそのとおりにできるとき、彼らは最もいきいきして、「自由」を感じています。そして「自由」の中にあるときにこそ、子どもたちは本来の力を発揮し、こころも頭も同時に動かしながら学んでいます。
参考記事:大人の善意が子どもの感性を殺してしまうことがあることを知ってほしい |こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て
教えないことで、教えられることがある。
教えない指導が子どもたちを伸ばすことがある。
伝えたいという思いが空回りしていないか、子どもたちの表情は曇っていないか、自由にサッカーを楽しんでいるか…大人が忘れてはいけない視点なのだと思います。
プロフィール
サッカー少年の子どもを持つ母
子どもたちをもっと笑顔にするためには大人が変わらないといけない…
本には大人が変わるヒントがたくさん散りばめられています。
大人の心を育む本をご紹介していきます。