糸島のフットボールレポート。
有坂さんの指導する「エリア伊都」の練習に参加してきた時のことを書いておこうと思います。とても楽しく、多くを学ぶことができました。
有坂さんってこんな人(エリア伊都HPより拝借)↓
ノビシロを感じさせる糸島のサッカー少年たち
私は横浜のスエルテというクラブで5年ほど幼稚園〜小学生カテゴリーの指導に携わった経験がありますが、中学生カテゴリー、ジュニアユース年代を指導する機会はありませんでした。
ジュニアユース年代というのはとても可能性に溢れ、大切にしなければならないフェーズであるということは理解していましたが、自分が実際に携わることはなかったのです。
その年代に有坂さんが携わっている。
サッカー観や人生観もとても共感する有坂さんが、その年代に対してどのようなアプローチをするのか、とてもとても興味がありました。
今回は、何かを伝えるために参加をするというよりも、この年代の子どもたちを体感しようと思い選手として参加させてもらうことにしました。
練習前に早速子供たちに絡みボールを蹴る。
東京から来たよく分からないオトナに戸惑いを見せながらも、受け入れてくれたエリア伊都の子たち。
一緒にボールを蹴りながら言葉以上の会話ができるのがサッカーの魅力なのです。
ボールを蹴りながらそれぞれの個性をなんとなく把握していきます。
一人ひとりが自分の得意なカタチを持っている印象でした。
有坂コーチの練習が始まりました。
試合のシチュエーションをイメージさせる言葉
2人組でボールをコントロールするトレーニングから、徐々に発展して2対2のボールキープへとトレーニング強度は上がっていく。
ボールを失わない為の試行錯誤を2人でコミュニケーションをとりながら行わなければならない。
組み合わせを変え、相手を変えながら…
そして、シュートゲームへ。
とりわけ印象的だったのは有坂コーチの試合中のシチュエーションをイメージさせる言葉でした。
このゲームのシチュエーションは、試合のこういう場面で… と選手たちにイメージさせ、それぞれの表現を引き出すトレーニング。
ここはもっとこうしなさい!こうやりなさい!というコーチングは一切なく、選手それぞれのイメージがプレーで表現されるのを待つこと、自然に出てくるのを待つんですね。
最初は全然ゴール出来なかった子たちも次第にイメージが具現化されていく。
有坂コーチのスタンスに子供たちの主体性が引き出されていくのが印象的でした。
最後は試合形式のトレーニング。
自分も混ざってプレーしましたが、みんな思い切り挑んできてくれて素晴らしいトレーニングを締めくくりました。
自分を出すこと、自分を表現すること
有坂さんが練習の最後にみんなと話す時間を設けてくれました。
この時に話したことは…
みんなそれぞれ素晴らしいものを持っていて、
一人ひとり個性があって面白いと思いました。
でも、もっと自分を出して良い。自分を表現して良いんじゃないか。
せっかくある技術が出しきれていないと感じました。
まだまだ出せると思います。
このようなことを話しました。
誰からも強制されることのないこのピッチで、思う存分自分のプレーを、自分の感情を表現してほしいと思いました。
サッカーは真剣な遊びであり、クリエイティブなものです。
プレーする選手一人ひとりが、どう考え、どう表現し、仲間とどんなハーモニーを奏でるか… 常に生み出される表現は変化するものです。
好奇心に忠実に、自分の感覚に忠実になれる「エリア伊都」ジュニアユースのこの環境で自分たちの表現を思い切り磨いてほしいと思いました。
自分を解放することでサッカーはもっと楽しくなる
有坂コーチの考えるサッカー観を聞いてみました。
「 自分自身を解放すること 」
様々な環境を経験していくなかで気づいたらそれが僕のサッカー人生でのテーマになっていました。
一番大きな影響を与えたのは、ブラジルとコスタリカでの経験。
日本では体験したことも見たこともないほどのとんでもなく激しい球際の戦いが練習から当たり前に繰り広げられていて、しかもその熱いバトルだけではなくて、どうやって相手の裏をかいてやろうかという遊び心から生まれる駆け引きもあちこちで発生していて。
そのとき、サッカー人生で初めて怖さを感じたんです。
それは、失敗したら怒られるとかの外圧による怖さではなくて、「 隙を見せたらやられる 」という内側から湧き上がってきた恐怖感。
剣道や柔道やボクシングで相手と向き合ったときの感覚に近いのかもしれません。ただそんな怖さがあった反面、ワクワクした気持ちも湧き上がっていました。
言い方は変ですけど「 命を使ってる!」って。
で、そのとき、自分も周りも「 動物みたい 」って思ったんです。
頭で動いてるというより、感覚に動かされてるというか、身体が自然と反応しているというか。
人間がもともと持っているはずの「 野性 」が思いっきり解放されていました。だから自然と、ごく自然と、すべてのプレーに感情が込められていたし、動きにはダイナミズムがあって、力強くもあった。
しかもその中には、繊細さとしなやかさだってあった。
野性の窓が開いてることでその選手が持っているありとあらゆる能力が総動員されて( もちろん知性も含めて )プレーとして表現されているように感じました。
じゃあ、どうやったら日本で、子供たちの野性を解放できるんだろう?それが指導をする上での大きな問いになりました。
「 それをやっちゃダメだろ 」「 こうしろよ 」という禁止や命令が溢れすぎてる今の日本では小さい頃は全開だった子供たちの野性の窓が残念ながら閉じられていることが多いと思います。
で、頭が主役になっていき考え過ぎてしまうことで、知らないうちにその窓にロックまでかけてしまっている。だから日本で指導する場合にはまず、そのロックを解いたり、窓を開けることが必要になるなぁと思っています。自分が発想したことを素直にやってみる、そんな自分事だと感じられる体験を重ねていくこと。
成功や失敗そのものではなくて、そこで生まれる自信や発見やエネルギーが窓を開けていくのに必要な安心感や勇気につながっていくはずだから。そうして「 自分自身を解放すること 」ができるようになっていったら人間として、そして選手としての個性もまた自然と立ち上がっていくんだと思います。
ボールを扱うこと。相手と駆け引きすること。自分の武器で表現すること。そして、自分自身を解放すること。
ジュニアユースの3年間でそのことに大きな喜びを感じられるようになっていってほしいです。
で、そんな自分でユース年代のサッカーに思いっきりチャレンジしていってほしいです。
そんな有坂コーチが指導するエリア伊都のHPはこちら↓
有坂さん Muchas gracias!
有坂さんのブログ↓
サッカーの本質を追求する旅はつづく…