ピッチ上の風景 〜とある試合の一幕〜
試合開始10分が過ぎた頃だろうか… 圧倒的にボールを支配されている。我々は相手の流動的な中盤をつかみきれずにボールを展開されていた。
「6番にフリーで持たせるな」「いやそこは持たせとけ」「次出るとこで狙え」。深くプレスにいくと誘き出された格好になって中盤にスペースを作られる。「深追いするな!どっかで相手が無理するからそこで奪おう。」、「とにかくトップにボール入れさせるな!裏取られないように注意しとけ!」そう言いながら私とダブルボランチを組むタケは相手の中盤が油断したところを狙った。
ボランチの駆け引き
相手6番からのパスを8番が受けた瞬間だった。タケは相手の懐に身体ごとバチッとぶつけ懐深くに足を入れた。激しく身体がぶつかっているがボールに足が届いた。テクニックのある相手8番も絶妙な球際のディフェンスに驚いた表情だ。ファールを要求しながらも笛は吹かれない。プレーオンだ。それと同時にFWのタイラはセンターバックと右サイドバックの間に走りだす。パスが出る瞬間に相手から一歩離れ、絶妙なスペースを作る。そこにタケからボールがスっと入ってくる。ディフェンスが一番嫌なところでボールを受ける。
FWがDFを凌駕する瞬間
ゴールまではまだ40mくらいある。タイラ一人に対してディフェンスは3枚並走する形だ。パスの選択肢はない。しかし、いつでも相手が足を出せるところにアウトサイドでトントンと誘き出すようなドリブル。相手がここぞとばかりに足を出そうとした瞬間だった。ズバッとスピードを上げた。罠にかかったディフェンスはあっという間に抜き去られた。並走していた一人のディフェンスが身体をぶつけにいくが、逆にそのチャージで勢いをつけて、そのままシュート!強烈なシュートがネットに突き刺さる。
シュートは足を思い切り振りぬくというよりもボールの芯をとらえる為に神経を集中するようなシュートだった。枠をとらえることに優先順位をおいたテクニカルなシュートであるが、その感覚を持つストライカーは滅多に日本にはいない。
※この話は私のピッチでの体験を元に感じたことを登場人物とともに描写したものです。今回登場した二人(偽名)は現役時代はJリーグ某クラブから声がかかるくらいのレベルなので参考になるはずです。実際のピッチの中で起こっていることが少しでも伝われば嬉しいです。外国人リーグでの体験も書いていきたいと思います。
試合中はどんなコミュニケーションがとられているか
このストーリーで知って欲しいことは、試合中の”声”です。どんな言葉が選手間で交わされてるかということと、質の高いプレーについて考えるきっかけになれば嬉しい。
良いボランチの球際の守備
ボランチのタケが相手からボールを奪う場面。本当に良いボランチは身体のぶつけ方と足の入れ方が上手い。下手な守備はただ激しく、相手を削るだけ。良い守備は身体をうまくぶつけて相手の懐に足をいれる。このポイントを是非知って欲しい。
サッカーを知らない大人がサッカーを教えると、「サッカーは格闘技」だから激しくがむしゃらに身体ごとぶつかっていけ!となる。相手を怪我させる守備はダサいんだということを知ってもらいたい。
本当に良い選手は球際の守備、ボール奪取が抜群に上手い。そういう選手はもちろんボールをとられない。奪われない術も身につけている。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…
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